ナフサが止まる日 — 日本人の暮らしから消える436のもの

ブレインレンタル妄想教室 第2回

前回、タックスヘイブン論から「日本の足元を掘る」というオイルディガー構想に辿り着いた。エネルギー安全保障の話だった。石油を燃やして電気を作る、その輸入が止まったらどうなるか、という。

書き終わってから、ある人に指摘された。「石油は燃料だけじゃないですよね。プラスチックも、化学繊維も、ゴムも、塗料も、医薬品の原料も、全部、石油からできていますよ」と。

——確かにそうだ。私たちは石油を「燃料」として認識しがちだけれど、本当に怖いのは、もしかしたら燃料が止まることより、素材としての石油が止まることなのかもしれない。

そこで、今回の思考実験はこれだ。

「もし日本へのナフサ輸入が止まったら、家から何が消えるか?」


ナフサとは何か

簡単に整理しておく。

ナフサとは、原油を蒸留して取り出される沸点50〜150℃の留分のこと。「粗製ガソリン」とも呼ばれる。これを高温で分解(クラッキング)すると、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンといった基本化学物質が得られる。

この6つの物質が、現代の石油化学産業の出発点になっている。世界中のプラスチック、合成繊維、合成ゴム、塗料、接着剤、化学品の、ほぼすべてがここから派生して作られている。

日本のナフサ自給率は、ほぼゼロに近い。年間消費量約3,500万トンの大半を、中東(サウジアラビア、UAE、カタール)、シンガポール、韓国などからの輸入に頼っている。日本の石油化学コンビナート——千葉、川崎、四日市、岡山水島、徳山——は全部、輸入ナフサを前提に動いている。

つまり、ホルムズ海峡が閉鎖されたり、台湾有事でシーレーンが止まったりすると、ガソリンが止まる前に、まずナフサが止まる。

ナフサが止まったら、まず止まるもの

エネルギー安全保障の議論は、よく「原油の備蓄日数」で語られる。日本の石油備蓄は国家・民間合わせて約240日分ある、と。

ただ、ナフサについてはそこまで備蓄されていない。石油化学業界の在庫は、通常1〜2ヶ月程度。3ヶ月もナフサ輸入が止まれば、日本の石油化学コンビナートはすべて停止する。

その時、何が起きるか。

まず、ペットボトル飲料の流通が止まる。コンビニとスーパーから、お茶、水、ジュース、炭酸飲料、すべてのペットボトル飲料が消える。代替容器(瓶、紙パック、缶)に切り替えるにも、それらの設備自体が稼働していない。

レジ袋とゴミ袋が手に入らなくなる。スーパーマーケットの運営自体が困難になる。家庭ゴミを出す袋もない。

おむつ、生理用品、マスクが消える。これらは全てポリプロピレン製の不織布が中核素材。代替素材は綿しかないが、綿は石油由来の合成繊維(ポリエステル)と混紡されているケースが多く、純綿100%の製品供給は限られる。

医療現場が止まる。点滴バッグ、輸血用チューブ、使い捨て注射器、医療用カテーテル、人工透析器のチューブ、血液バッグ、サージカルガウン、医療用手袋——病院は事実上、石油化学で動いている。在庫がなくなれば、手術も透析も止まる。

自動車工場が止まる。バンパー、ダッシュボード、シート、エアバッグ、タイヤ、内装樹脂——現代の乗用車1台あたり、約150kgのプラスチックと合成ゴムが使われている。これらの供給が止まれば、完成車生産ラインは停止する。

衣類が手に入らなくなる。ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン(ストレッチ素材)——現代の衣料品の8割以上に石油由来の合成繊維が使われている。

そして、住宅・建材も止まる。塩ビ管、樹脂サッシ、断熱材、壁紙、床材、塗料、接着剤——新築住宅もリフォームも、ナフサなしでは成立しない。

これが、私たちが普段意識していない「素材としての石油への依存」の実態だ。

436製品リスト:ナフサから生まれているもの

ここから、具体的な製品リストを5カテゴリーで示す。

ナフサクラッキングから得られる6つの基本物質ごとに、私たちの身の回りにある製品を整理した。元のリストには約500個あったが、化学的に厳密に精査して、ナフサ由来として正確なものだけを残した結果、約436製品になった。

カテゴリー1:エチレン系誘導品(約111製品)

主にポリエチレン(LDPE、HDPE、LLDPE)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)を経由した製品群。ナフサから得られる基本物質の中で最も生産量が多いのがエチレン(クラッキング生成物の約30%)。

特に意外なものを挙げると:

医療系: 点滴バッグ、輸血用チューブ、使い捨て注射器、医療用カテーテル、人工透析器のチューブ、血液バッグ、医療用滅菌袋——病院の機能のほとんどがエチレン系プラスチックで支えられている。

建材系: 水道パイプ(PVC製)、下水道管、雨どい、樹脂サッシ、壁紙(ビニールクロス)、クッションフロア、電線の被覆——現代の住宅は半分以上が「PVCの家」と言ってもいい。

包装系: レジ袋、ゴミ袋、食品用ラップ、保存袋、ペットボトルのキャップ、お米の袋、スナック菓子の外袋、レジャーシート、ブルーシート——スーパーマーケットの運営そのものがエチレン系プラスチックに依存している。

断熱・緩衝系(ポリスチレン): 発泡スチロール、家電購入時の緩衝材、住宅用断熱材、納豆容器、カップ麺の容器、生肉・鮮魚トレー、CDケース。

エチレン系リスト全111製品を見る

ポリエチレン(LDPE、HDPE)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)を経由した製品群です。

■包装・容器
レジ袋/ゴミ袋/食品用ラップフィルム/マヨネーズの搾り出し容器/ケチャップのボトル/牛乳パックの内側コーティング/シャンプーの詰め替えパウチ/ジッパー付き保存袋/お米の袋/スナック菓子の外袋/ペットボトルのキャップ/洗剤のプラスチックボトル/柔軟剤の容器/ウェットティッシュのフタ/豆腐のパック容器/納豆の容器/コンビニ弁当の底トレー/冷凍食品の包装袋/アイスのカップ/プリンのカップ/ヨーグルトの容器/乳酸菌飲料のミニボトル/ストロー/テイクアウト用スプーン/テイクアウト用フォーク/お弁当の仕切りバラン/保冷剤のパック/化粧水のボトル/歯磨き粉のチューブ

■建材・配管
自動車のガソリンタンク(HDPE製)/灯油のポリタンク/水道パイプ(PVC製)/下水道管/雨どい/樹脂サッシ/壁紙(ビニールクロス)/クッションフロア/電線の被覆/通信ケーブルの保護管/塩ビタイル/玄関の樹脂タイル

■農業・産業
農業用ビニールハウスのフィルム/マルチシート/肥料の袋/防草シート/育苗トレー/漁網(PE製)/釣り糸(PEライン)/工事現場のコーン/安全ネット/ブルーシート/土のう袋/荷造り用の紐(PE製)

■日用品
バケツ/ゴミ箱/衣装ケース/ハンガー/洗濯ばさみ/洗濯かご/歯ブラシの柄/ボールペンの軸/クリアファイル/プラスチック定規/テープカッターの台座/デスクマット

■子供用品・玩具
幼児用のプラスチックブロック/砂場用のバケツ・スコップ/浮き輪/ビーチボール/ビニールプール/レジャーシート

■雨具
使い捨ての雨合羽/ビニール傘のシート

■医療
点滴バッグ/輸血用チューブ/使い捨て注射器のシリンジ/錠剤のPTP包装(透明シート)/医療用カテーテル/人工透析器のチューブ/血液バッグ/医療用滅菌袋

■その他
冷蔵庫内のトレー・ポケット/洗濯機の糸くずフィルター枠/エアコンのドレンホース/自動車のマッドガード/ワイパーのゴム固定部(樹脂)/釣りの浮き/クーラーボックスの断熱材外殻/ライフジャケットの浮力体(PEフォーム)/ゴルフのティー

■ポリスチレン系(エチルベンゼン経由)
発泡スチロール(魚の輸送箱)/家電購入時の緩衝材/住宅用断熱材(スタイロフォーム)/納豆の容器(発泡スチロール製)/カップ麺の容器(発泡PS)/生肉・鮮魚トレー/使い捨てコップ(透明PS)/お惣菜の透明なフタ/CDケース/DVDのトレイ/プラモデルのパーツ/使い捨て髭剃りの柄/アイスのプラスチックスプーン(透明)/ヤクルトなどのミニボトル容器/化粧品コンパクト/口紅のチューブ外枠

■エチレングリコール・PVC系
自動車の不凍液(クーラント)/PVCレザー生地/システムキッチンの一部/病院の床材

カテゴリー2:プロピレン系誘導品(約90製品)

ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル(アクリル繊維・ABS樹脂の構成要素)を経由。ナフサ生成物の約15%。

特に意外なもの:

衛生用品: 紙おむつの吸水シート、生理用ナプキンの表面材、使い捨てマスク、サージカルガウン、医療用キャップ、アルコール消毒綿——衛生インフラの中核。

家電筐体: 扇風機、掃除機、洗濯機のパルセーター、炊飯器、温水洗浄便座——白物家電のほとんどがプロピレン系プラスチックで成形されている。

物流: ビール通い箱、コンテナボックス、パレット、結束バンド、PPバンド——物流インフラの基盤。

アクリル繊維: セーター、ぬいぐるみ、毛布、玄関マット、バスマット——冬の暮らしを支える素材。

プロピレン系リスト全90製品を見る

ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル(アクリル繊維)を経由した製品群です。

■食品容器・包装
コンビニ弁当の耐熱フタ/電子レンジ対応のタッパー/カップ麺のプラスチック外枠/ペットフードの袋/お菓子袋のフィルム(一部PP)

■自動車部品
自動車のバンパー/インストルメントパネル(ダッシュボード)/コンソールのボックス/バッテリーのケース/ドアミラーのハウジング/車内天井の成形素材/フロアマット(PPカーペット系)

■衛生用品(不織布)
紙おむつの吸水シート/生理用ナプキンの表面材/使い捨てマスク/サージカルガウン/医療用キャップ/アルコール消毒綿の不織布/お掃除用ウェットシート/クイックルワイパーの取り替えシート

■家電
扇風機の羽根/扇風機のガード/掃除機の本体ボディ/掃除機の延長管/洗濯機のパルセーター/炊飯器の外装樹脂/温水洗浄便座のリモコンカバー

■トイレ・洗面
トイレの便座・便ふた/洗面器

■物流・産業
ビールの通い箱/コンテナボックス/折りたたみコンテナ(オリコン)/パレット/結束バンド(インシュロック)/PPバンド/セメント袋(樹脂クロス製)

■床材・建材
カーペットの裏地/人工芝の芝葉/換気口のガラリ/配線用のモール

■アクリル繊維
アクリルセーター/アクリル製カーテン/アクリル製のぬいぐるみ生地/アクリル系毛布/玄関マット(アクリル系)/バスマット(アクリル系)

■安全用品
安全ベスト(反射ベスト)のメッシュ/ヘルメットの内装衝撃吸収材/養生シート

■収納・文具
100円ショップの収納バスケット/コスメ収納ケース/ペン立て/書類トレー/カッターナイフのグリップ/スプレー缶のキャップ/スプレーのノズル・トリガー/ボトルのポンプディスペンサー

■園芸
プランター/ジョウロ/園芸用ふるい/霧吹き/果物収穫用のカゴ/遮光ネット/防虫ネット

■買い物・行楽
スーパーの買い物かご/マイバッグ(折りたたみPP製)/保冷バッグの断熱材/ピクニック用のプラスチック皿/プラスチック製のコップ

■キッチン
水筒の外装・フタ/麦茶のピッチャー/米びつ/水切りかご/三角コーナー/排水口のごみ受けカゴ/まな板(樹脂製)/フライ返し/お玉(PP製)/トングの持ち手/泡立て器の持ち手/缶切りのグリップ/包丁の樹脂製ハンドル/ピーラーのフレーム/洗剤計量スプーン/サラダスピナー/アイストレー/カトラリーケース/調味料ラック/キッチンタイマーの外装/デッキブラシの毛(PP)

カテゴリー3:ブタジエン系誘導品(約45製品)

合成ゴム(SBR、BR、NBR)、ABS樹脂(ブタジエン成分)を経由。

タイヤ: 自動車、自転車、バイク、車椅子——全てのタイヤは合成ゴムなしでは成立しない。天然ゴム100%のタイヤはほぼ存在しない。

家電筐体(ABS樹脂): ノートパソコン、デスクトップPC、モニター、プリンター、ゲーム機、固定電話、インターホン——黒系の家電ボディの多くはABS樹脂。

玩具: プラレール、ミニカー、ラジコン、レゴブロック——子供の遊びもブタジエン系プラスチックに支えられている。

ブタジエン系リスト全45製品を見る

合成ゴム(SBR、BR、NBR)、ABS樹脂(ブタジエン成分)を経由した製品群です。

■タイヤ類
自動車のタイヤ(トレッドゴム)/自動車のタイヤ(サイドウォールゴム)/自転車のタイヤ/バイクのタイヤ/車椅子用タイヤ

■ゴム製品
輪ゴム(合成ゴム製)/炊飯器のゴムパッキン/圧力鍋の安全弁パッキン/窓枠のサッシパッキン/自動車のワイパーゴム/ドアのウェザーストリップ/パソコンキーボードのキー跳ね返りゴム/リモコンのボタン(ラバー)/マウスのスクロールホイール

■ABS樹脂(家電・電子機器)
ノートパソコンの外装/デスクトップPCの筐体/モニターのベゼル/プリンターの外装カバー/ゲーム機のコントローラー/ゲーム機本体の外殻/固定電話・ビジネスホンの受話器/インターホンの外装/防犯カメラのハウジング

■ABS樹脂(玩具)
ミニカーのプラスチック部分/プラレールのレール/プラレールの車両外装/ABS製のフィギュア/ラジコンのボディ/レゴブロック

■ABS樹脂(その他)
キャリーケース(ABS製)/アタッシュケース/ヘアドライヤーのボディ/ヘアアイロンの持ち手/電動シェーバーの本体/電動歯ブラシの本体/スロットマシンの筐体/パチンコ台の前面枠/リコーダー/卓球のピンポン玉(ABS製)/自転車・バイクのヘルメットシェル(ABS製)

■合成ゴム(スポーツ・履物)
スニーカーのソール/サンダルのソール/卓球ラケットの合成ゴムラバー/ゴルフクラブのグリップゴム/自転車のハンドルグリップ

カテゴリー4:芳香族系誘導品(約165製品)

ベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)を起点に、PET、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、各種塗料・接着剤を派生する、最も製品数が多いカテゴリー

PETボトル: お茶、水、炭酸飲料、醤油、みりん、ドレッシング——日本の飲料流通の主要パッケージ。

ポリエステル衣料: ワイシャツ、スーツ、学生服、作業着、スポーツウェア、サッカーユニフォーム、シーツ、枕カバー——衣料品の中核素材。

ナイロン: ストッキング、タイツ、ナイロンジャケット、ザック、テント、寝袋、釣り糸、漁網、テニスコートのネット、歯ブラシの毛、ボディタオル——アウトドアと日用品の素材。

ポリカーボネート: メガネのフレーム、サングラスのレンズ、スマホ背面カバー、LED電球のグローブ、自動車のヘッドライト、信号機のレンズ、DVDディスク、ブルーレイディスク、ICカード、クレジットカード——「透明な強い樹脂」が必要な場所のほぼ全部。

ポリウレタン: マットレス、ソファ、自動車シート、合成皮革、スマホケース、水着、スポーツブラ、加圧インナー——「柔らかさ」と「伸縮性」を支える素材。

塗料・接着剤: 住宅の外壁ペンキ、自動車塗料、マニキュア、瞬間接着剤、ホットメルト接着剤、ガムテープ、両面テープ、付箋、湿布、絆創膏——「貼る」「塗る」のほぼ全部。

医薬・化学品: 解熱鎮痛薬(アスピリン、アセトアミノフェン)、湿布薬、日焼け止め、衣類の染料、食品保存料、人工甘味料、合成香料——医薬品と化粧品の有効成分の多くがベンゼン環を持つ化合物。

芳香族系リスト全165製品を見る

ベンゼン・トルエン・キシレン(BTX)を起点に、PET、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリウレタン、塗料・接着剤を経由した、最も製品数の多いカテゴリーです。

■PET容器
ペットボトル(お茶・水・炭酸用)/醤油のペットボトル/みりんのボトル/ドレッシングのボトル/ヤクルトの蓋部分/お弁当の透明容器(一部)/卵パック(PET製)

■ポリエステル繊維(衣料)
ワイシャツ(ポリエステル混紡)/スーツ/ネクタイ/学生服(セーラー服・詰襟)/作業着/スポーツウェア(ドライTシャツ)/サッカーのユニフォーム/ランニング用タイツ/靴下/フリース素材の衣類/ポリエステル製カーテン/冬用あったかインナー

■ポリエステル繊維(寝具・インテリア)
布団のシーツ/枕カバー/羽毛布団の側生地/クッションの中綿/タオルケット/ミシン糸/フリースブランケット/レースのカーテン

■自動車内装
自動車のシートカバー/シートベルト/エアバッグの袋体

■ナイロン繊維
ナイロンストッキング/タイツ/ナイロンジャケット(ウインドブレーカー)/ダウンジャケットの表地/登山用ザック/テントのフライシート/寝袋の外皮/レインウェアの表地/釣り用ナイロンライン/ナイロン製の漁網/テニスコートのネット/サッカーゴールのネット/ギターのナイロン弦/ウクレレの弦/歯ブラシの毛(ナイロン)/ヘアブラシのピン/洋服ブラシの毛/ボディタオル/結束バンド(高強度ナイロン)

■ナイロン樹脂(工業部品)
パソコンの冷却ファン/自動車のエンジンカバー/インテークマニホールド/ポンプのインペラ

■ポリカーボネート
腕時計のケース(G-SHOCK等)/腕時計の樹脂バンド/メガネのフレーム(セル・TR-90)/サングラスのレンズ/スキーのゴーグル/オートバイ用ヘルメットのシールド/機動隊の防護盾/カーポートの屋根パネル/ベランダの波板/高速道路の透光型遮音壁/スマートフォン背面カバー/タブレットのケース/LED電球のグローブ/信号機のレンズ/自動車のヘッドライトカバー/テールランプのレンズ/スーツケースのPCボディ/双眼鏡のボディ/カメラのボディ外装/レンズフード/ICカード(電子マネー・社員証)/クレジットカード/運転免許証/液晶ディスプレイの導光板/DVDディスク/ブルーレイディスク

■ポリウレタン
キッチンスポンジ/お風呂洗いスポンジ/洗車用スポンジ/マットレス(低反発・高反発)/ソファのクッション材/座椅子のウレタン中身/自動車シートのウレタンパッド/ネックピロー/イヤーパッド(ヘッドホン)/マイクの風防/防音材/隙間テープ/化粧用パフ/自動車のボディ用ウレタン塗料/クリアコーティング剤/床用ワックス/屋上ウレタン防水材/断熱スプレー(発泡ウレタン)/合成皮革のバッグ(PUレザー)/人工皮革の靴/レザージャケット(合皮)/スマホケース(手帳型合皮)/システム手帳のカバー/車のステアリングカバー/シフトノブの革巻き

■ポリウレタン弾性繊維
スパンデックス(ストレッチジーンズ)/水着/スポーツブラ/加圧インナー/自転車用レーサーパンツ/ボクサーパンツのゴム紐部/ソックスの口ゴム

■エポキシ樹脂
エポキシ接着剤(2液混合型)/プリント基板のグリーンマスク/缶飲料の内面コーティング/缶詰の内面エポキシ塗料/サーフボードのエポキシ層/釣り竿のエポキシ樹脂固定部/テニスラケットの樹脂部/ロードバイクのフレーム/CFRP製品のエポキシマトリックス

■塗料・コーティング
住宅の外壁用ペンキ/遮熱塗料(屋根用)/鉄橋の防錆ペンキ/船底の防汚塗料/マニキュア(エナメル)/プラモデル用塗料/スプレーペイント/木工用ニス/ラッカースプレー/トタン屋根の塗装面/ガードレールの白塗装

■インク・筆記具
油性ボールペンのインク溶剤/油性マジックのインク/ホワイトボードマーカーのインク/蛍光ペンのインク/修正液/アクリル絵の具/印刷用インキ/コート紙用樹脂インキ/段ボール印刷用インキ/食品パッケージ裏の印刷インキ

■接着剤・粘着剤
ガムテープの粘着剤/セロハンテープの粘着材/両面テープ/マスキングテープの粘着剤/付箋の弱粘着剤/湿布の粘着剤/絆創膏の粘着剤/テーピング用テープ/ニコチンパッチ等の経皮パッチ基材/瞬間接着剤/ホットメルト接着剤(グルーガンの芯)

■医薬・化学品
解熱鎮痛薬(アスピリン、アセトアミノフェン)/湿布薬の薬面(サリチル酸メチル)/防虫剤(パラジクロロベンゼン)/衣類の染料(アゾ染料)/蛍光増白剤(洗剤用)/食品保存料(安息香酸ナトリウム)/人工甘味料(サッカリン)/日焼け止め(オキシベンゾン等)/香水(ベンジルアルコール、バニリン等の合成香料)

■包装フィルム
お菓子袋のアルミ蒸着PETフィルム/レトルトパウチ(耐熱PET)/冷凍うどんの袋/カイロの個別包装(PET/PE積層)

カテゴリー5:その他誘導品(約25製品)

メタノール由来、酢酸ビニル由来、その他。

合板・木質ボード: 接着剤としてフェノール樹脂・ホルマリン樹脂が使われている。家具の大半。

洗濯のり・スライム: PVA(ポリビニルアルコール)由来。

ウインドウォッシャー液、ガソリン水抜き剤、固形燃料: メタノール由来。

その他リスト全25製品を見る

メタノール由来、酢酸ビニル由来、その他の製品群です。

■フェノール・ホルマリン樹脂
合板の接着剤/MDF(カラーボックス等)のバインダー樹脂/パーティクルボードの固形化樹脂/麻雀牌(ユリア樹脂)

■メラミン樹脂
キッチン天板のメラミン化粧板/オフィステーブルの天板メラミン

■メタノール・有機溶剤系
自動車のウインドウォッシャー液/ガソリンの水抜き剤/キャンプ用の固形燃料/臨床検査用の固定液(ホルマリン)/シール剥がし液/パーツクリーナー/金属脱脂洗浄剤/シンナー(塗装希釈剤)/除光液/印刷インキの溶剤(一部)

■酢酸・酢酸ビニル系
酢酸(工業用)/ビニロン繊維(作業服・ロープ用)/PVA(洗濯のり)/スライム(玩具)/木工用ボンド(酢酸ビニル樹脂)/水性糊(合成樹脂系)

■その他
衣類用シミ抜き剤(ベンジン)/ライター用オイル/ドライクリーニング用溶剤(一部)


全部合わせると、私たちは「歩く石油」だ

このリストを作りながら気づいたのは、現代日本人の生活が、想像していたよりも遥かに深く石油に絡め取られている、ということだ。

家の中を見回してほしい。視界に入っているもののうち、純粋に「石油由来ではない」と言えるものが、どれだけあるだろうか。

木のテーブル——表面にはウレタン塗料が塗ってある。 コップ——プラスチック製ならエチレン系、ガラス製でも棚はPVCコーティング。 本——表紙のコーティング、印刷インキ、製本糊、すべて石油由来。 畳——縁の布部分にポリエステルが入っているケースが多い。 ふすま——枠の塗装、引き手の樹脂、すべて石油由来。 布団——カバーがポリエステル、中綿がポリエステル綿、シーツがポリエステル。

体に身につけているものも同様だ。下着、靴下、シャツ、ズボン、ジャケット、靴、メガネのフレーム、腕時計のベルト、スマートフォン、財布の中のクレジットカード、定期券のICカード——ほとんどがナフサから派生した素材でできている。

つまり、私たちは「石油を着て、石油を持って、石油の家に住んでいる」。

ナフサ輸入が止まれば、これらの新規供給が全て止まる。在庫が尽きれば、代替が効かない。「ガソリンが買えなくなる」より、「ティッシュペーパーが買えなくなる」(ボックスがプラスチック、抽出口の補強がポリエチレンフィルム)方が、日常生活への影響は遥かに大きいかもしれない。

ではどうするか

ここまで読むと、絶望的な気持ちになるかもしれない。でも、対策がないわけじゃない。

第一に、国産ナフサ生産の可能性。 前回のオイルディガー記事で触れたメタンハイドレートからは、実は天然ガスだけでなく、エタンやプロパンなどのオレフィン系炭化水素も得られる。これをクラッキングすればエチレンとプロピレンが作れる。米国がシェール革命でエタンクラッカーを増やしたのと同じ路線。日本でも、メタンハイドレートの商業化が進めば、国産エチレン・プロピレンの道が開ける。

第二に、バイオプラスチックの本格化。 サトウキビ由来のバイオエチレン(ブラスケムが商業生産)、トウモロコシ由来のPLA(ポリ乳酸)、海藻由来のバイオプラスチック——これらは石油に頼らないプラスチック生産経路。コスト的にはまだ石油由来より高いが、有事には貴重な代替手段になる。

第三に、ケミカルリサイクルの強化。 今の日本のプラスチックリサイクルは、ペットボトルからペットボトルへの循環が一部実現している程度。これを本格的なケミカルリサイクル(プラスチックを分子レベルまで分解して原料に戻す)に発展させれば、新規ナフサに頼らない循環経済が作れる。EUは2030年までにプラスチック包装の55%リサイクルを義務化しているが、日本はまだ遅れている。

第四に、化学品の国家備蓄。 原油・LNGの国家備蓄はあるが、ナフサや基礎化学品の国家備蓄は限定的。最低半年分の備蓄を国策として持つだけで、有事の耐久力が大きく変わる。

第五に、サプライチェーンの多角化と国内コンビナートの戦略的位置づけ。 現在、日本の石油化学コンビナートは合理化の波の中で縮小傾向にある。三井化学・三菱ケミカル・住友化学が事業統合や撤退を進めている。「国際競争力がないから縮小」という経済合理性の判断だが、これは「平時の最適化」の典型だ。有事の時には、国内コンビナートの存在自体が安全保障資産になる。前回と同じ構造の話だ。

結局のところ

「資源安全保障」と聞くと、ほとんどの人は「ガソリン」「電気」「ガス」を思い浮かべる。でも本当に怖いのは、目に見える燃料が止まることよりも、目に見えない素材としての石油が止まることだったりする。

私たちの暮らしの根っこが、想像以上に石油に絡め取られている。ナフサが止まれば、家から436種類のものが消えていく。一つひとつは小さくても、全部合わせると、現代生活そのものが崩壊する。

この事実を認識した上で、改めて前回のオイルディガー構想を読み返すと、議論の重さが変わってくる。**「自前の資源を持つ」ということは、単にエネルギー独立を意味するのではなく、「文明そのものを自前で支える」**ということだ。

メタンハイドレートを掘る、レアアース泥を掘る、原発を回す——これらは全部、燃料の話だけではない。素材としての石油化学を、自前で回せる国になるか否か、という問いでもある。

戦後80年、輸入と借金で成り立ってきた国。私たちの暮らしの素材も、輸入で成り立っている。タックスヘイブンで富裕層を呼び込んでも、ナフサが止まったらレジ袋すら作れない国に、未来があるとは思えない。

「みんなでオイルディガー」は、「みんなで素材を作る」でもある。

ナフサが止まる日が来る前に、私たちは私たちの暮らしを、自分たちの手で支える設計に切り替える必要がある。


このシリーズについて

「ブレインレンタル妄想教室」は、AIとの雑談から生まれる思考実験を、毎月1〜2本のペースで書いていくシリーズです。社会・経済・政治の前提を一度ひっくり返して、本気で考えてみる場。

過去回:

次回予告(第3回): 「移民1000万人を10年で受け入れたら、日本はどうなるか」

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この妄想教室自体が、私が提供しているBrain Rentalというサービスの実演でもあります。一人で考えていたら辿り着けない場所に、対話の力で連れていってもらう——それが、Brain Rentalで提供したいものです。

経営課題でも、社会課題でも、個人的な進路の話でも。テーマは何でもいい。雑談から始まる議論を、一緒に深めませんか。

※本記事は政策提言や投資助言ではありません。Brain Rental × AIで生まれた思考実験を、ブレインレンタル妄想教室として再構成したものです。引用した数値・事例は2026年5月時点の一般的な公開情報に基づきますが、最新の情報については各種公的機関の発表をご確認ください。

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