2025年度、国は年金・医療・介護の事業に79.8兆円を支出しました。1日あたり約2,200億円です。
大きすぎて、正直ピンときません。私もそうでした。だから、自分の手で地図にしてみることにしました。
一人の国民として、予算を見てみたかった
きっかけは、ある政党が公開している予算の可視化サイトを見たことです。見ているうちに、一人の国民として予算を見たらどう見えるのか、と思いました。
私は両親の在宅介護を続けています。それなのに、介護を支えるお金が国のどこから来て、どこへ流れているのかは、説明できませんでした。当事者なのに知らない。これは少し恥ずかしいことだと思いました。
そこで、政府が公開している行政事業レビューのデータを使い、AIと一緒に「老いの予算地図」をつくりました。政党や政府とは関係のない、個人の制作物です。
対象は、厚生労働省の年金・医療・介護を担当する局の602事業です。そのうち2025年度に支出があったのは509事業でした。
三つの分野は、まったく違う流れ方をしていた
一枚の図にすると、流れ方の違いがはっきり見えました。
| 分野 | 2025年度の支出 | 主な行き先 |
|---|---|---|
| 年金 | 52.1兆円 | 98.6%が受給者へ直接 |
| 医療 | 24.5兆円 | 59.0%が協会けんぽなどの公的な法人・団体へ |
| 介護 | 3.1兆円 | 99.5%が自治体へ |
年金は、国から一人ひとりの受給者へほぼ直接届きます。最も大きいのは基礎年金の給付で26.2兆円、次が厚生年金の給付で24.6兆円です。この二つだけで、地図全体の6割以上を占めます。
医療は、保険の仕組みを通ります。協会けんぽなどへ渡るお金と、広域連合や自治体へ渡るお金に、大きく分かれていました。
介護は、ほぼすべてが自治体へ向かいます。国のお金は、主に自治体を通して介護の現場へ向かっているのです。
同じ「老いのお金」でも、通り道はこんなに違います。
地図に載っていないお金のほうが大きい
ここが、私には一番の発見でした。
地図の介護は3.1兆円です。しかし、介護保険の総費用は2026年度の予算ベースで14.6兆円あります。医療も同じで、地図の24.5兆円に対して、2023年度の国民医療費は48.1兆円でした。
年度も範囲も違うので、単純に割り算はできません。それでも、保険料や自治体の負担、窓口で払う自己負担の多くが、この地図の外を流れていることは分かります。
「国の予算を見れば全部分かる」と、私は思い込んでいました。違いました。
財源にも注意が必要です。地図では約64兆円が特別会計から出ていますが、基礎年金には税金からの国庫負担が入っています。特別会計の線は、保険料だけを意味しません。
AIは速い。でも、聞き返すのは人間だった
作業中に、少し印象に残ることがありました。
最初の試作は、2024年度の数字で仕上がってきました。最新のCSVが2025年版だったからです。AIもそれを最新だと報告しました。
私が「2026年11月時点では?」と聞き返すと、政府のサイトには2026年版のデータが出ていました。CSVはまだないだけだったのです。そこから数字をすべて入れ替えて、76.9兆円は79.8兆円に変わりました。
AIは、人間なら何週間もかかる集計を、一日で終えます。でも、「それ、本当に最新?」と一言聞き返す人間の役割は、まだ残っています。
良し悪しの前に、まず見る
この地図は、事業の良し悪しを判定しません。誰かを責めるためのものでもありません。私が知りたかったのは、正しいか間違っているかの前に、そもそもどうなっているのか、でした。
まだ試作です。分類は自動で行っているので、誤りが残っているかもしれません。公式のCSVが出たら、数字も照合します。お気づきの点があれば、ぜひ教えてください。
超高齢社会の負担について、私たちはよく議論します。でも、その前にお金の流れを自分の目で見た人は、どれくらいいるのでしょうか。
誰かの何かのヒントになれば幸いです。
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